ハンバーグーチョキパー
長新太 さく・え 和田誠 しあげ 福音館書店
こどものとも年少版384号 2009年3月号
ハンバーグがやってきました
ポテトとほうれんそうとにんじんがのっています
ハンバーグがやってくるなんて。
しかも道の向こうから自分で歩いてやってくるのです。
キッチンでフライパンの上でうきうきしているハンバーグではないのです。
まるで生き物のようです。
なのにお皿にのったままなのです・・・。
こんな絵本の始まりに、大人はちょっとびっくりしますが、子どもはなんなく受け入れます。息子は、最初のハンバーグがやってくるページになると、「「ポテトとほうれんそうとにんじんがのっています」って言って!!早く!」と叫びます。なぜ叫ぶのか。その響きが待ちきれないらしいのです。ほうれん草がのっていたって、何がのっていたって、どうでもいいような気がしてしまいますが、そのままを素直に表現する子どもにとても近いセンスが心地いいのかなと思います。そんな嘘のないリズムで、物語はほのぼのと進みます。
当時2才半の息子には、長新太さんの作品はどれもがピンとくるわけではありませんでした。でもこの頃はちょうどハンバーグを意識し始めた頃。ハンバーグが歩いてくる楽しさを感じられる頃に読んだこの絵本は、見事にはまりました。長さんの絵本はナンセンスだから難しいということでもなく、その子にあったぴったりのテーマ、ぴったりの時期というのがあるのだなと思います。
この絵本は、長新太さんが亡くなる前に残した下書きに、和田誠さんが色をつけ、デザインし、完成させたものです。長新太さんのような、和田誠さんのような、楽しく明るい色合いの絵本です。2009年3月のこどものとも年少版として出版された後、特製版として出版されましたが、現在は品切れ中で入手が少し難しいかもしれません。図書館などでみつけた時はぜひ手にとってみてくださいね。