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優先順位

出産後しばらくして、「優先順位」というものを漠然と考えるようになりました。一日中赤ちゃんの鳴き声や機嫌に追いかけられていて、なにしろ時間がないのです。でもなにが優先かとじっくり考える余裕も同じようになく、その課題は一旦保留、そうこうしているうちに息子も3歳になり、お店を始めることになりました。そしてもう一度浮かんできた「優先順位」という言葉。自営業をやるにあたってはとても大切なことでした。その事業おもしろそうだけど、それを優先させると子どもとの時間を削ることになるけど?本の仕入れの方がおろそかにならない?それでもやるべきこと?・・・・そんなことを常に考えています。

 

新しいアイディアはたくさんあって、すぐに形にできるのは自営業の楽しさでもあるし、失敗するとドツボに入ってしまうという弱みでもあるかと思います。真新しいことをせずに同じものを維持していくというのはたとえ地味でも、私たちの店では特に大切なことです。維持とは、少しの改善です。本の並べ方を少し変えてみたり、絵本と雑誌を隣り合わせてみたり、お店の備品を新しくしたり。ほんの少しの変化を毎日することで、本やその周りの景色まで違って見えたりします。そうするとうれしいし、楽しいのです。日々少しずつ変化することは、同じよいものを維持していくためのやる気につながっています。

 

そして今回新たに浮かんできた案件は「お店で冊子(フリーペーパー)を発行してはどうか」というものでした。始めるのなら、月に1回は発行したいし、読み込めるものにしたい。楽しいイメージは膨らみますが、一体どれだけの時間がさかれるのだろうか、何が犠牲になるのだろうか。

 

そもそも「ちぇすなっと」というお店は、お母さん方を含めた様々なお客さんがほっとできる場をめざしています。でも一番の根底にあるのは、誰かのためとかかっこいいことではなく、自分たちの「そういう場を作りたい」という気持ちです。やりたい仕事をやること。家族全員で同じ目的に進んでいけること。夫婦でともに子育てをすること。会社のしがらみに心が潰れてしまわないこと。自分たちの責任でやっていけること。お店をやることが、自分たち家族の豊かな生活につながると考えたからです。

 

そして今回の案件の冊子について考えてみると、根底には私たちの「書きたい」「作りたい」という気持ちがありました。だったら少し無理をしてでも作ろうということになりました。できあがった冊子をお客さんに喜んでもらえたら、心からうれしいですし、じっくり読んでもらえたり、家族でわいわい読んでもらえたり、楽しめる冊子にしたいと考えています。

冊子の名前は「IGAGURI(イガグリ)」に決まりました。「IGAGURIできましたか〜」と近所のお客さんが当たり前のようにお店に入ってきてくれる日がきたら、本望です。

 

外にでることがままならない日々が未だに続いています。お店の経営にもやはり不安がつきまといます。経費も本当は削減しなければなりません。でも今回の冊子のように何か目標があるということが、こんなにも楽しいという経験は久しぶりでした。気持ちがくすぶってしまう今の時期には、とても大切なことだと再確認しました。

 

「やりたいという気持ち」は優先順位の上のほうに常にあるべきなのかなと思います。それがお店を続けていくときに、軌道修正のような役割をしてくれそうな気がするのです。

 

IGAGURIは毎月の月初めに店頭にて提供します。