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理想の絵本棚

こどもの絵本棚の話です。

 

家庭に置くこども用の絵本棚と言うと、絵本の表紙を見せて収納できるディスプレイ型の本棚が思い浮かびます。小さな子にも手の届く高さで、10冊ほどの絵本がこちらを向いて並んでいる棚。字が読めなくても、表紙を見て選んでほしいですし、こどもが自分で選ぶ楽しさがあるので、絵本により親しめる。なにより部屋に一つそんな棚があるととてもかわいい、理想の絵本棚です。

 

そんな絵本棚がとても欲しかったのですが、場所もとってしまうし、新しく棚を新調するのもいろんな面で大変です。理想は理想として、何を優先させるか。我が家では結局「量」を最優先させました。絵本屋という仕事柄、読んでもらいたい絵本はどんどん増えていきます。今こども用として並べている家の絵本を数えてみると、ざっと250冊ほど。小さな頃から毎晩絵本を読んでいますが、3才の頃は毎晩4冊だったのが、4才が終わろうとしている今は4冊では物足りないことも多く、10冊読む日もあれば、本も読まず寝てしまうほど疲れている時もあれば、4冊の中に「エルマーとりゅう」などの少し長めの幼年童話をまぜて、途中まで読んで眠る日もあります。同じ絵本を毎日読む時もありますが、久々に読むとおもしろい本もあるので、250冊がちょうどなくらい、均等にぼろぼろになるまで読みあさっています。

 

絵本の半分は薄い月刊誌なので、数から想像するよりもコンパクトにまとまっているその絵本たちは、約2mの細長い棚に背表紙をみせて並べています。棚には仕切りもなく、全くもってこどもに優しい本棚ではありません。そんな棚にたくさんの本を並べるのはこどもにとっては重労働なので、結局親の私が片付けていますが、大人にも優しくない本棚です。

 

字が読めなかったころの息子は、背表紙の色に特徴があるものや小さな絵が描いてあるような本はすぐに覚えて、小さな猫の絵が背表紙に描かれている「11ぴきのねこ」などはとても軽やかに抜き出したりしていました。タイトルしか目に入っていない大人の私とは違う部分で、息子は絵本に親しんでいるなと感じます。

背表紙でみつからない時は、たくさんの本を全部引っ張り出して、床に並べて選んでいました。字が読めるようになった4才の今でも、まずは大胆に20冊ほど引っ張り出します。どうやら「これが読みたい」と思って選ぶのではなく、床に並べた絵本たちをぱらぱら眺めて吟味し、その日の気分のものを選んでいるようです。

それでも埋もれてしまう絵本もあるので、たくさん並ぶ絵本の中から私が息子の大好きな絵本をすっと抜き出すと、「そうそう!こんな本あった!大好き!」とまるで宝物を見つけたような、いい笑顔をします。

 

素敵に並べるディスプレイ型の棚も捨て切れませんが、私は今の並べ方も、良く言えば頭が鍛えられるし、こんなところにあったという発見もあるし、なにしろずらっと並ぶと気持ちがいいので、なかなか好きだなあと思っているのです。

 

結局理想の本棚は、その家に住む人たちの気持ちの良さで決めたらいいのだろうと思います。