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息子、絵本を買う

絵本を中心とした古本屋を始めようと決めたのは息子が2才の頃。それからオープンするまでの1年間は仕入れた絵本で家が溢れかえっていました。

 

お店には絵本を中心とした本が約4000冊在庫として常にあります。本が売れていくと、同じタイトルの本を探して仕入れることもあれば、新たな本を仕入れることもあります。古本ですので、欲しい本をいつでも手に入れるのは難しく、以前もあった本、初めての本と、その比率は半々くらい。ですので常に初めての本と出会う日々を過ごしています。

お店に置く絵本は私が全て目を通していますが、5才の息子の好きそうな絵本は、息子の反応を見てから店頭に置いています。

お店と同じように、家の本棚にも絵本はもちろんあります。絵本を全て所持することはできないけど、繰り返し読むことで絵本は濃く、深く子どもの心の中に入っていくので、いい絵本は家の本棚にも置いてあげたい。ということで家の絵本も増え続けています。

 

先日、クラフトブック(厚紙を切り取って立体物を工作する本)にはまっている息子が、新しいシリーズが欲しいということで、お年玉を持って近所の本屋に買いに行くことになりました。息子が新刊書店に本を買うために足を踏み入れたのは実は初めてでした。お目当てのクラフトブックはなかったのですが、本屋さんはまるで玩具屋さんのように、ブロックがあったり、シールブックがあったり、キャラクター図鑑があったりなので、自分のお金で何か買うんだと張り切っている息子は目を爛々とさせてポケモン図鑑を音読したりブロックを物色したり、とても楽しそうに過ごしていました。所持金の関係で、買えるものはせいぜい1つ。さんざん迷っていた息子が、ふと近くにあった絵本に目をとめました。大好きな「パンどろぼう」という絵本のシリーズ3作目が平積みで置いてあったのです。おもちゃに気を取られて気づいていなかった息子が、この絵本を見つけるや否や、「これにする」と即決。親の私達が「いいの?絵本やけど?」とついつい止めに入ったくらいです。でも息子の決断は揺るぎなく、おもちゃも図鑑も元に戻してレジでお金を払い、購入した絵本をうれしそうに抱える息子を見ていて、ふと気づきました。

自分でお店で絵本を選んで買うのは初めてだったと。

 

今まではおさがりの絵本だったり、絵本をプレゼントしてもらったり、息子が幼稚園や図書館や自分のお店で好きになった絵本や息子の好きな作家さんの絵本だとかを私が買ってきていました。常に息子の好みを大切にはしていました。でもやっぱり絵本屋として読ませたい絵本、好きそうだからという絵本に偏りがちで、息子は喜んではいましたが、もう5才の息子に対して私の好みが入り込みすぎていたかもと少し反省したのです。

 

家には「パンどろぼう」の1作目があって、それは息子の通うこども園からのプレゼント絵本でした。園で子どもたちが大好きで読んでいる絵本を、年中さんの時の担任が選んでくれたものでした。ですので、「パンどろぼう」は親としての私の主観抜きで、まずは幼稚園で楽しいと思ったという経験からスタートした絵本です。園で自分が主体となって好きと思った絵本、その3作目を今回息子は購入したのでした。そんな親が介入しない状況の中、何かに出会ったり、好きになったりするというルートは、無意識に忘れがちなのですが、私自身も親としてそっと見守っていきたいと今回思ったのです。

 

毎晩の絵本タイムに息子は自分の買った絵本を自分で読み語り、あとの絵本は読んでもらうという日々を過ごしています。

自分で買った絵本は格別にうれしいのですね。