「暑くなるとお客さん来ないですよ〜。」
お店をオープンする前、長年カフェを営んでいる方に言われました。
「お店という商売はどれだけ続けていても、お客さんの多い日、少ない日が読めない。来ると思ってたくさん仕入れたら来ないし、どうして今日!という日に限ってわんさか来てくれたりする。でも夏だけは、少ないですね〜」と。
夏は涼しいカフェに行きたくなるかと思っていたので、意外な言葉でした。立地条件によっては夏でもお客さんが絶えないカフェもあるでしょうし、もちろん一概には言えません。
私たちもお店を初めてみて、その日のお客さんの数は全く読めないということがよくわかりました。そして夏だけは本当にお客さんの足が遠のくということもわかりました。特に今年の夏は猛暑続きでしたので、外へ出る気持ちがなくなるのもよくわかります。クーラーのきいている家から外へ出るなんて、とんでもないことです。
駅前のお店などはまた違った人の流れがあるかと思いますが、わざわざ足を運んでもらう私たちのようなお店に来ようと思うと、ハードルが上がるのも仕方ありません。
お店側は来てもらうためのきっかけは作っても、その後はただ待ち続けることしか出来ません。
太陽の光が照りつけ、空気が歪んでギラギラして見えるお店の前の通りを眺めていると、この店は必要とされていないのかもしれないと妙な妄想にかられることも、正直あります。
だけどその待っている間に私たちにできることはたくさんあります。まずはお店の個性を作っていくこと。周りの情報に流されず、自分達がやってみたいと思うことを磨きあげて地道に続けていくこと。それはお店に並ぶ本の1冊1冊だったり、毎月発行している冊子だったり、コーヒーの味だったり、おもちゃのある空間演出だったり・・・。
それらを求めて来てくれるお客さんが色を加えてくれることで、お店としての佇まいが深まっていくのだと思います。もう一度行きたいと思ってもらえる場はすぐにできるわけでもなく、そうやって年月を重ねて作られていくのかもしれないとお店を初めて感じるようになりました。
今年は夏のカフェのジンクスにもかかわらず、猛暑の中、お客さんの絶えない日も何度もありました。私たちのお店は駅から歩いて5分もかかりません。でも賑やかな商店街とは反対側の住宅街の中にあるので、ほとんどのお客さんはわざわざ駅から歩いて来てくれます。たった5分なのですが、その5分がもう、ものすごい暑さなのに来てくれるのです。汗だくになって、ガラガラと扉を開けて入って来てくれる瞬間が本当にありがたく、お客さんあってのお店だとひしひしと感じています。
ちぇすなっとは今月で2年半を迎えます。
絵本屋としてもカフェとしても、まだまだ始まってもいないくらいです。
いつの日か地域の人も遠くの人も何度も足を運びたくなるお店となるよう、
夏の暑さなど吹き飛ばして、今日も仕入作業をがんばりたいと思います。