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継続するための一時停止

絵本屋を始めてよかったと思うことは、息子についてのあれこれを定期的に夫婦で話せるようになったこと。

満員電車から逃れられたとか、納得のいかない仕事をこなさなくてよくなったとか、そんなことよりも何よりも。

 

ちぇすなっとを始めたのは息子が3才の時。今から約4年半前です。

自営業が共に初めての私たち夫婦は、話し合いを重ねながら、園の準備、送り迎え、家事全般のもろもろを少しずつ分担していきました。どちらかが早く帰宅して、息子を迎えに行き、夕方の時間を共に過ごす様になりました。

夫婦共に同じ分量で息子と関わり、園への送迎をしていると、そこでの出来事や疑問点など、ちょっとしたことを伝え合うのが自然と日課になりました。子どもの周りのことは今まで生きてきた世界とあまりにも違い、些細なことに戸惑ったり不安になったり。でもその日のことをただ話すだけで、思った以上のガス抜きになりました。

それに夫婦での自営業は急な出来事に対してのストレスが少なく、小心者の私たちには合っていると感じました。

息子の行きたくないという気持ちにも余裕を持って寄り添え、急に病気になっても対応できるのは、私たちには本当にありがたいことでした。

 

だけど自営業という仕事は、「楽しく気楽」なんかではありません。

好きなことを仕事にできるなんて素敵ですねとよく言われるし、始める前は私たちも、もう少し気楽に考えていました。

実際は自営業も雇われて働くのも、どちらも同じ。どちらも仕事。

やりたくないことを耐えてやりぬかなければいけない状況は多々あるし、心が荒むこともしょっちゅう。しかも自分たちでやっているからこそ、上手くいかないことへの痛手は半端なく大きいのです。

 

じゃあどうして続けているのか。

その理由は、勤めている人と、さほど変わらないんじゃないかと思うのです。

小さなやりがいがたくさんあるし、時には大きな喜びもある。しんどいことも塗り替えられるくらい、仕事というのは自分を肯定してくれる存在だと思うし、それはどんな仕事をしていても変わらないと思います。

 

4年半が経ちましたが、まだまだ店として上手くいっているかというと、そんなことは全くなく、続けていくと悩みも蓄積していきます。

子育てだって、2人で共有だとか響きのいい言葉は使っていても、実際に余裕をもってやれているかというと、残念ながらそんなことはありません。ちょうどよいバランスは本当に難しい。

でも、これが今の私たちのベストだし、この形で続けていきたいと思っています。

 

今、息子は2年生。小学1年生の壁をひとまず乗り越え、それでも日々揺れ動きながら、毎日家族で笑ったり、怒ったり、泣いたりしています。

朝起こしてくれなかったと息子が怒り、パンツと間違えてインナーをはいてみんなで大笑いし、出発直前に漫画を読み始めた息子に私が激怒し、ごめんねと仲直りをし、行ってきますと何度もハグをする。

毎日が映画のようにドラマチックに過ぎていきます。ゆったりと過ごしたいと心底願うけど、これが私たち家族の現状です。

 

そんな中、この秋2人目の子どもを出産することになりました。

すでに余裕がないというのに、2人目の対応なんてできるのか?

出産という一大事に、改めて自分たちの生き方を見直してみて、私たちに必要なのは「心の余裕」だと感じました。

慌ただしい子育ての中、息子や自分から湧いてくる様々な感情を受け止めるにあたって、余裕のない状況ではとても無理でした。自営業で多少余裕ができましたが、それでも足りませんでした。夫婦で互いに支え合い、家族でも支え合う。お互いを思いやる気持ちは余裕がなければ生まれてこないとつくづく感じました。

 

なので今回の出産後、お店を1ヶ月休業することにしました。

休みと気づかずに来てくれたお客さんを、がっかりさせてしまうかもしれません。金銭的にも厳しくなってしまうでしょう。

だけど、子どもは、全力で受け止めても足りないのです。せめて最初の1ヶ月は、生まれてくる子も、それ以上に兄となる息子のことも、全力で受け止めてみたい。

仕事を一時停止し、生活に全力を注ぐ。仕事と生活のバランスは、そういう時期があってもいいのではないか、4年間の自営業を経て、そう思います。

 

1ヶ月休むことで積み重なる何かが、今後のちぇすなっとの強みとなってくれることをただひたすら願っての一時停止。

自営業は、生活のすべてが仕事にとてもダイレクトに繋がっています。それは背筋の伸びることでもあり、人生を紡いでいく上でとても素敵なことでもあると思うのです。

 

いつもちぇすなっとを応援してくださっているみなさま、本当にありがとうございます。 

2024年10月の1ヶ月、ちぇすなっとはお休み致します。